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将棋の豆知識17〜18 光風社 将棋101話 転用

17 将棋倒し-2009.03.01-

 近ごろ、新聞や雑誌で、しばしば、「ドミノ理論」という用語にお目に掛る。主として政治評論家や経済評論家が用いるらしい。

 ドミノと書いても、たぶん、読者は判らないと見てか、必ず、カッコを付して「将棋倒し」と説明を加えてある。どうも、評論家は外来語を好んで使う傾向が強い。「将棋倒し」と書くより、ドミノと書いたほうが、現象の説明に便利だと思うのであろうか。

 どうしても日本語ではニュアンスが違うときは、外来語を使う。これは私も賛成であるが、ドミノだけは、いささか納得がゆかない。

 ドミノとは何だろう。辞書で調べて見れば、ベトナムが共産化すれば、周辺の国々も共産化されるということを、西洋カルタの遊戯になぞらえて、アメリカがいい出した、ということである。

 語源が判って、少々、がっかりした。そのドミノの新語を駆使する人は、日本には古くから、「将棋倒し」という日常語があることを知っているのであろうか。ドミノ理論にカッコで「将棋倒し」と付すよりは、「将棋倒し」にカッコで「ドミノ理論」と説明をつけるのが順当というものではなかろうか。

 遠い南北朝の応安年間(十四世紀)に、『太平記』という軍記物が成っている。四十巻よりなるその本の巻七に、早くも「将棋倒し」という用語が見える。将棋用語が文芸作品に登場した最初のものだと、と私は見ている。

 年配の方にはすぐに判る「千早城合戦」の条に、「将棋倒ヲスル如ク、奇手四五百人、圧ニ討タレテ死ニケリ」と書いてある。

 もう、十四世紀のそのころから、この将棋用語は日常語と化している。日本における将棋の歴史(古将棋であるが)の古さを示す一つの例であろう。

 むろん、『太平記』は当時のベストセラーであっても、いまの時代のように多くの人びとに読まれたわけではない。『平家物語』が琵琶法師によって語り継がれたごとく、『太平記』は室町時代になって、多くの物語僧たちに受け継がれて宣伝されて行った。

 さらに、江戸時代に移ると、巷の辻々で『太平記』を台本として講釈することが流行した。「太平記解釈」とも「太平記読み」とも呼ばれている。江戸の庶民は、活字ではなく、耳で聞き知った。だから、日常会話でも、「将棋倒し」という将棋用語を使い、文芸作品にも数多く見えるようになった。ちなみに、江戸時代に流行した「太平記読み」が、小屋で語られるようになって、いま見るような講談というジャンルが誕生した。

 「将棋倒し」は、盤上に駒を並べて立てて、それをゆび先で突いて倒す遊びである。江戸時代から、幼童のあいだで人気があった。

 いまは、すこしく廃れた感がある。私も親しい幼童の父母に勧めたりするが、「いい駒は高くてね・・・」という答えが返ってくることが多い。

 近ごろは、伝統の駒に代って、プラスチック製の駒が普及した。安価で丈夫であるが、「将棋遊び」に用いるには不向きである。

 駒は黄楊を以て最上とする。昔から、そういわれてきた。やはり、長い歴史のなかで磨かれてきた黄楊駒は、将棋愛好家には忘れ得ぬ郷愁なのであろう。

18 高飛車-2009.04.01-

 高飛車という言葉は、初めは純粋に将棋の専門用語であった。よほどの将棋通でないことには、その間の事情については御存知ないことであろう。

 『広辞苑』をひもとくと、高飛車とは、将棋の飛車という駒が強力であるところから、「あたまごなしに威圧すること」と解説を付してある。

 江戸時代は、相掛り戦で飛車が中段に浮くことを「高飛車」と命名した。明治に生をうけた将棋ファンは、そうした古い言葉を耳にしているのか、「高飛車」を用いていたが、いまでは、将棋用語としては完全に「死語」と化してしまっている。

 現在は、「浮き飛車」という。ときに、「中段飛車」とも唱え、例えば、「飛車を中段に浮く」というふうに用いる。

 江戸末期に出版された『俚言集覧』という本には、「高飛車で負けを引出す」という用例が見える。河竹黙弥の歌舞伎脚本、『勧善懲悪覗機関』(『村井長庵巧破傘』ともいう)にも、「爰は一番高飛車に」という用例が見える。

 式亭三馬の滑稽本、『古今百馬鹿』には、「負けて腹立つ下手将棋馬鹿」という一章が設けられてある。『浮世風呂』の「午後の光景」で描写した下手将棋のやりとりと同じく、洒落と地口で綴るが、各段に歌川国直の筆になる狂画が一つ、或いは二つを掲げ、三馬と門弟が作る狂歌を添えてある。つぎの三馬の狂歌が傑作である。

  歩三兵でも手にたりぬへぼめらと
   声高飛車の将棊あらそひ

 こうした例で見るように、すでに江戸の末期には、「高飛車」は将棋用語というよりは、庶民の日用語に転じている。

 明治の時代になれば、どう変ってきたか。興味を持って資料を漁ったことがある。

 明治十四年十一月号の『驥尾団子』という新聞に、「飛んだ手に大手の高飛車」と題する諷刺たっぷりな、というよりは痛烈な政治漫画が載っていることを発見した。

 この事件は、いま風にいえば、明治版の「金脈事件」である。その年十月十二日、明治天皇は、来る明治二十三年を期して国会を開設するとの詔勅を発した。明るい話題のかげにかくれて、同じ日、時の政府は、すでに七月に決定済みとなっていた開拓使官有物払下げの閣議決定を撤回した。

 何しろ、千四百余万円という大金を投じた官有物を、わずか三十八万円で、しかも三十年賦の無利子で五代厚友の会社に払下げしようとしていたのだから、秘密が洩れて蜂の巣をつく騒ぎとなった。

  政治漫画は、請願者が大きな手(官権)でおさえつけられて苦悶する図である。おさえつけた手には「はこだ」と書き、それに手を加えて、「はこだて」と読ませてある。江戸末期に流行した狂画の流れを汲む手法を真似たものといえる。

 「大手」は、御存知のように「王手」をもじった言葉である。この際、「高飛車」という用例は、官権の横暴を衝いて、まこと、決め手ともいうべき「妙手」であった。

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